2009年10月4日日曜日

職人のおでん

珍しく休日の更新です。


先日、オーダーメイドで玉子焼きまで作ってしまった医術の職人の話を書きました。

最近ではもう何年も会っていませんが、私の30年来の友人に、獣医大学を中退して人間を看る医者に転身した変わり種がいます。

若かりし頃、お互いの修行時代に奴の言葉で忘れられないものに、「封建的徒弟制度を色濃く残しているのは、一般的な職人仕事のほかに、医者だよ」というのがあります。

上下関係の厳格さや、親分子分の終身派閥のほかに、『上手くなりたきゃ人より早く来て、見て覚えろ』・・・式古き佳き技術習得の要諦の話だったと思います。

だからと言って、皆が皆、、、でもないんでしょうが、その類の職人に共通することは道具マニアだということ。フェチだと言ってもいいかも知れません。

あいかわらず購入価格は闇の中ですが、それを職業にしている方ならいざしらず、自分に合った好みの柄の角度で使い易い玉子焼き欲しさに、創業永禄三年の京都御鍛冶にオーダーで作らせるなどという発想自体、道具フェチ以外の何者でもありません。



その方から、昨日当店にお届けいただいたのがタイトルの『職人のおでん』です。

具材は大根と玉子のみ。
素人らしからぬ、正攻法のたっぷりとした澄んだお出しに、きちんと面取りして煮抜いた大根と玉子をジップロックに入れてお持ち下さいました。

「大根と出しだけを鍋で人肌に温めて、、、」とこだわりの調理指示。
「沸騰させずに大根が芯まで温まったら、玉子を入れて白身だけあたためる。
添えるのは芥子でなく卸し生姜。」
・・・・。
和食屋形無しです。


前回おいでいただいた際に、玉子に秘密があるのは承知していましたが、白身だけ固まって黄身の部分が半熟の素晴らしいおでんでした。

先生の持論では、「煮てないから煮玉子とは呼んじゃいけない」そう。
大根と、煮ない玉子だけの、これがおでんと呼べるのか?などという瑣末な議論はさておいて、明日からのお勧め料理にちょっと憎い職人おでん登場です。

山田

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